鬼(口語自由詩)

先の夏の暑さを怖れ

奔流する

命の

行き来

夏の暑さを怖れ

 

私は幽霊として脚が無く

ここにいてそこにいけない

そこにいてここにいれない意識の猥雑さを嘆き

 

まったくの鬼でもあって

煙草や

ウィスキーや

地球といった

茶色走ったものらを好み

しかし常に飢え

渇き

満たされることなく

 

郊外の

こみいった

草一本ない敷地の家の書斎から

あの青空をのぞみ

あの青空にあこがれ

あれはどこか死に近そうで

また違うようだがどうだろう

 

得たものでなく

与えられたもので生活を構成し

なにとなく

憤怒し

なにとなく

哀しめ

こんな書き物も慰めにならず

 

昔の都会の風景をおもいつつ

せっせと雑巾で

木目を拭っては

肺気腫を怖れつつ

エコー・シガーを

一服一服吹かすのだ

まるで自らの

命さえ自分で喫っているように

一服一服吹かすのだ

 

一服一服吹かすのだ